Tokyo Zombi

映画の感想を書きます。全米の週末ランキングもまとめてます。

『東京喰種 トーキョーグール』 誰よりも原作ファンに向けて

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人の姿をしながら、人を喰らう、怪人“喰種(グール)”が潜む東京。その脅威に人々は恐れを感じていた。
読書好きの平凡な大学生・カネキは、通い詰める喫茶店「あんていく」で、自分と同じ作家の本を愛読する女性・リゼと出会い、想いを寄せる。自分の運命を大きく変えることになるとは知らずに…。人の命を奪い、喰い生き永らえる “喰種”の存在に疑問と葛藤を抱きつつ、あるべき世界の姿を模索する青年の未来は―!?
2011年の連載直後から圧倒的な支持を得て、すでに単行本累計2300万部を誇る超人気コミック「東京喰種トーキョーグール」を実写映画化!
映画『東京喰種トーキョーグール』 公式サイトより)

原作となったコミックは第1部となる全14巻を読んだことがあります。アニメも放送当時に2期とも鑑賞済みです。そういったひいき目を抜きにしても、さいきん流行りのマンガ原作の実写映画のなかでもいちばん好きかもしれないですね。

※ストーリーのネタバレはしていません。映画だけではわかりにくい点を最後にネタバレしています。

まず、映画化された部分は原作でもかなり序盤のエピソードだけなので、119分という長さにムリなく収まっています。伝えたいメッセージをしっかりとわかりやすく届ける話運びになっているのもGoodです。

むしろ過剰なくらい丁寧に描かれており、どっぷりと世界観に浸かることができますが、その反面「展開が鈍重」「原作未読者への説明不足」という意見もあると思います。

喰種というホラーテイストの設定に、ゴシック調のビジュアルを重ねたダークファンタジー作品なので、テンポよく進める“あっさり薄味タイプ”よりも、世界観の表現に力を入れた“こってり濃厚タイプ”のほうが合っていると判断した結果かな、とじぶんは納得しています。

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コミックの実写化ではキャラクターの再現度に注目が集まりますが、それも問題ないと思います。それぞれ外見はパッと見で誰だかわかるし、セリフを口にしたときの雰囲気に違和感がないことも好印象でした。

原作のツボをおさえたエピソードのチョイスもよかったと思います。たとえばトーカちゃん(清水富美加)の「通れ…通れ通れッ」とか、あってもなくても話的には困らないですが、喰種にもいろんなタイプがいるということ、そしてぶっきらぼうなトーカちゃんの友だちへの気持ちなどが表されたいいシーンだと思いますね。

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ストーリーの核は喰種を追うCCGとの衝突であるため、バトルシーンの出来も気になるところでした。ワイヤーアクションには若干のもたつきもありますが、演出やCGの出来がよく、総じてなかなか見応えのあるものに仕上がってました。

一部、アップになりすぎて(…うん?)というカットもあったりはしましたが、レーティングへの配慮(グロ回避)なのかもしれないですね。まぁ仕方ないかな。

CGのほとんどは喰種の武器である赫子(かぐね)と、真戸(大泉洋)や亜門(鈴木伸之)の使用するクインケという武器にて使用されていますが、これが邦画では稀に見る出来だったと思いました。

赫子の特徴がうまく表現され、生きた虫のように脈打つ不気味さ、ぬめっとした質感と光沢の気持ち悪さ、鉱物的な鈍い輝きと美しさ、どれも見事です。「あらゆる地球に存在する鉱石や植物、動物の質感などを研究し、実際に存在しているものから多くのヒントを得た」と言うほどこだわっているため、かなりCGっぽさが軽減されているように思えます

www.cinematoday.jp

原作者の石田スイさんの熱望で主人公のカネキ役に抜擢された窪田正孝くんは、その期待に大いに応えてくれてました。マスクをつけてスイッチが入ったんでしょうかね。その怪演、いや狂演にはちょっと引きかけました…笑。

個人的に大泉洋の真戸は「狂った人を演じている人」に見えてしまい、少し物足りなさもありました。たまにふつうのオジサンに見えちゃうんですよね…。バラエティの観すぎかな。見た目だけなら吹越満さんとかいいと思ったんですけど。

鈴木伸之くんと栁俊太郎くん(四方役)も滑舌があやしいところもあったけど、雰囲気はほとんどイメージ通りだから許せちゃいますね。

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総じて原作再現度が高く、東京喰種ファンにこそ観てほしいと思います。今年も乱発しているマンガの実写化のひとつとして埋もれないだけの魅力はあるんじゃないかと思いますね。続編を製作するにはいろいろとハードルが高いと思いますが、万が一を期待しておこうかなと思います。

映画ではわかりにくい点をネタバレ解説

なんでカネキくんは喰種になったの?

リゼ(蒼井優)に殺されかけた後、リゼの赫包(喰種特有の器官)を移植され、見た目どおり半喰種の存在になりました。あの医者が意味ありげな雰囲気を醸していたのも作為的なものです。

真戸や亜門の使っていた武器ってなに?

クインケといいます。討伐した喰種の赫包を加工して作られた武器です。真戸は最終的にヒナミ(桜田ひより)の両親を元にしたクインケで闘っていました。ムチっぽいのが父親、盾が母親(相田翔子)ですね。

銃で撃ちまくればいいじゃん!

身体能力、再生能力赫子の性能などによって銃火器では効果が薄いのです。罠を仕掛ければ対抗できなくもなさそうですが、ただの人間だけでは被害が増すだけなので賢い手段とは言えなさそうです。

喰種に対抗するのがふたりって少なくない?

本作での東京は24区に分かれていて、カネキたちのいる20区は「あんていく」によって他の区よりも比較的平穏が保たれています。危険分子の存在は知られていますが、CCGも人手不足に困っており、優秀な人材は危険な区に回されているのが実情のようです。亜門も20区の捜査官の無能っぷりに怒ってました。ただ、真戸が殺害されたことにより20区の警戒レベルはかなり引き上げられることになるでしょう…。

喰種はなんでコーヒーだけは飲めるの?

なんででしょう?原作でもまだ説明はされていないようです。水やコーヒー以外も「不味い」だけで吐き気をがまんすれば飲み込めるようですが、たいやきが「馬糞」レベルですからね…。