彼女がその名を知らない鳥たち
原作者は『ユリゴコロ』も映画化された沼田まほかるさんです。あちらは映像表現もあいまって賛否両論でしたが、本作もゲスい人間模様に眉をひそめることも少なからず。しかし、それをもって余りある感動が味わえました。
※なるべくネタバレを避けていますが、そもそも本作は何も情報を入れず(予告編も避けて)観た方がいいので、まだ何も知らないよって人はぜひ鑑賞後に読んでください。
これぞ究極の献身。阿部サダヲの凄さが極まってます。 男女の関係を描いたシーンが多々あり、それがとてもリアルであるにせよ映画的演出としてはそんなに目を引くものではないなぁ…って感じだったんですが、阿部サダヲが出ているシーンは何倍もの魅力があります。
同様に、ほとんどのセリフはこの日本のどこかで交わされているであろうリアルなやりとりであって、阿部サダヲのセリフだけは一線が引かれていることが明らかです。圧倒的違和感。異物感。
また、リアルなやりとりの描写というのも、映画ではなかなか出会えないレベルのリアルさです。特に松坂桃李くんと蒼井優のシーンの諸々なんてのは、実際に見たことはないけどこういうこときっとある!って思うくらいに生々しいですね。それもまたすごいことです。
阿部サダヲはこの世界のなかではどこか神格化しているようにも感じられますが、それに対して松坂桃李くんのザ・男って印象が強い。しかもクズっぽい。でもあくまでもリアル路線。きっと探すと見つかるんですよ、ああいう人ね。
でもあそこまでのエロさはなかなかないですよね。 肌の露出は蒼井優も負けてないのに、肉体のエロさは圧倒的!引き締まった肉体美!そしてキスがまぁ濃厚ですねぇ。
いやぁ、それにしても阿部サダヲ…ハマり役だったなぁ。個人的にクチャラーが苦手なのでその不潔さにうっとなりましたが、それもまたリアルすぎて何も言えない。
『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』と信頼のおける出来の作品を作り上げてきた白石和彌監督。これはもう間違いないですね。来年公開予定の『サニー』『孤狼の血』も作風的にぴったりだと思いますし、期待度爆上げで待ちたいと思います。