Tokyo Zombi

映画の感想を書きます。全米の週末ランキングもまとめてます。

女神の見えざる手

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あらすじ:ワルキューレが見えざる手ですべてを操ります。

ネタバレはありません。

ジェシカ・チャステインの魅力に支えられた見事なスリラー映画でしたね。彼女は本作と同じジョン・マッデン監督の『ペイド・バック』にて評価されて以来、次々と賞レースにて活躍していたので、古巣に帰ってきたというか、恩を返しに来たというか、そんな感じでしょうか。本作でもしっかりとゴールデングローブの主演女優賞 (ドラマ部門)にノミネートを果たしていますね。

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話としては全然実情のわからないロビー活動を取り扱っているのですが、わからないなりになんとなく理解ができる作りですし、さらにどう転ぶのかハラハラできる展開が盛りだくさんと、エンタメっぽい仕上がりになっていました。

ジェシカ・チャステイン演じるエリザベス・スローンは、その業界では知らぬ者のいないロビイストで、よくある「働く女性」像みたいなレベルとは一線を画していることが徐々に明らかに。

いや、男女問わず、こんなに有能かつ仕事の鬼である人物を見たことがない…。正直怖いです。たぶん一緒の仕事場にいたら距離を置いちゃうな…。怒りっぽいお局さまとかそういうのじゃないもの。

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本作のロビー活動のテーマは「銃規制」がメインとなるのですが、彼女にとってはどんな人も物も金も情報も道具でしかなく、自身が加勢した陣地の勝利に行動理念があります。

それがまぁ恐ろしいことで、目的のためには手段を選ばない彼女がすべてをコントロールしているように感じられ、最初はその手腕にワクワクしていたものの、途中から(やりすぎて怖い…)と思うようになり、とある悲劇さえも最終的な勝利で霞ませてしまうほどの圧倒的支配力に頭を抱えたくなったのでした。

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そんな悲劇にさいなまれた人のことも気にはなりますが、映画ラストでは期待のどんでん返しもうまいこといって、じゃあそれで彼女のことが好きになるとか手のひら返しはできませんが、彼女の計算ではない優しさや弱さも垣間見える話だったので、素直にいい映画観たな―って思えました。ずるい。

そうそう、これ原題は『Miss Sloane』っていうんですよね。内容的に『女神の見えざる手』って邦題はうまいことつけたなって思います。女神は女神でも彼女はワルキューレでしょうね。ちなみにワルキューレとは「戦死者を選定する女」を意味するのだそうです(ワルキューレ - Wikipedia)。