ユリゴコロ
(映画『ユリゴコロ』予告編より)
「あなたの優しさには容赦がありませんでした」
※なるべくネタバレを避けていますが、そもそも本作は何も情報を入れず(予告編も避けて)観た方がいいので、まだ何も知らないよって人はぜひ鑑賞後に読んでください。
完成披露試写会にて鑑賞しました。上映前の舞台挨拶ではキャストの皆さんがネタバレをしないよう気を遣ってコメントされていましたが、映像が饒舌なのでミステリーとしてはかなりあっさりと真相に気づけます。
(映画『ユリゴコロ』特報2より)
しかし本作の魅力は構造上のトリックや謎にあるわけではなく、それぞれに傷を持った人物たちが織りなすドラマであったり、衝撃的なシーンにおける鮮烈なビジュアルにあると感じました。
鮮やかな照明や色彩で表現されるイメージはどこか浮世離れをしていますが、耳をふさぎたくなるほどの音表現とあいまってリアルな痛みまで伝わってきます。よくあるゴア描写よりも生々しいと思いましたし、痛そうな映像がダメな人は本当にNGなのでは…。
(映画『ユリゴコロ』予告編より)
主演の吉高由里子を始め、松山ケンイチや木村多江らの演技は真に迫るものがあり、とくに松坂桃李くんはいちばん複雑な演技をしていて、生唾を飲むほどの迫力がありました。
紛れもなく愛の話ではあるのですが、清々しいタイプではなく常に後ろ暗いような、言葉にできない歪んだ愛のカタチに、誰もが苦しみながらもその温かさを享受している様子がまた痛々しくて。共感はできないのに、辛くて胸が苦しくなります。
(映画『ユリゴコロ』予告編より)
各登場人物が心に持っている棘を「オナモミ」で表現しているのも秀逸ですね(じぶんはこう受け取りましたが各々に想像できる表現)。人工物ではなく、植物の棘というのが不気味さや卑猥さも感じられます。どんなシーンでオナモミが出てくるのか注目してほしいです。
以下でネタバレをしています。
(映画『ユリゴコロ』予告編より)
上述した通り、本作では松坂桃李くんがいちばん輝いていました。殺人者の手記を読み始めてからの変貌ぶりは怖ろしいほど。どちらかといえば穏やかなイメージが強かったので、そのギャップと演技力に魅了されました。同行者と感想を話し合っていてしっくり来たのが「荒ぶる桃李くん」というワードです。
荒ぶる桃李くん(画像はイメージです)
車をフルスロットルでかっ飛ばす!
お肉をファッキンテンポでミンチに!
その他…ムカデをグッチャグチャに踏み砕く、ワイルドにお酒をかっ食らう、鏡を拳で叩き割る、などの凶行はこれまでのイメージをぶち壊すほどの迫力で、彼の演技の幅を堪能することができました。彼の新境地だったと噂の『MOZU』も気になりますね。
木村多江最強説
(映画『ユリゴコロ』予告編より)
囚われの身となった婚約者を救うため、暴力団事務所に乗り込んだ桃李くんが目にした光景は、無残にも惨殺されたヤクザたちでした。これを観て戦慄を覚えたのはじぶんだけではないはず。
そう、木村多江があの細身ですべてをやってのけたという事実に恐れおののきました…。『地獄でなぜ悪い』の二階堂ふみも真っ青です!原作でどのように表現されていたのかが気になるほどの木村多江無双です。