ダンケルク
「何が見える?」「故国だ」
IMAX試写会にて鑑賞しました。これは圧倒的にIMAX鑑賞向きの作品だと思います。個人的にもIMAXは2Dが至高だと思っているので最高の環境で観れて幸せでした。
丸の内ピカデリーでは9/9~9/18まで35mmフィルムでの上映がありますのでそちらも併せてどうぞ。関西圏の方は109シネマズ大阪エキスポシティのIMAX次世代レーザーで鑑賞できればベストでしょうね。
TOHOシネマズのMX4Dやユナイテッド・シネマの4DXでの上映もあるようですね。体感型と称されることも多いので十分にアリだと思います。
※ネタバレ前に注意書きがあります。その前にも予告編等の画像を引用しているので、何も知らずに観たい!という人はぜひ鑑賞後に読んでください。
IMAX上映での繊細かつ大胆な表現は、冷たい空気や湿度まで感じるかのような陸海空の透き通る美しさはもちろんのこと、音響も極上のレベルで堪能できます。
爆撃や戦闘機の唸り声がみぞおちと足元を震わせ、しびれる感覚まで味わえ、まさにじぶんが戦場にいるかのような臨場感です。また重低音で迫る音楽や時計のチッチッチッという音が緊張や焦燥感を煽りまくってきて、心拍数が跳ね上がります。ハンス・ジマーに殺されるかと思いましたよ…!
クリストファー・ノーランにしては106分(正味99分)という尺は短く感じますが、むしろ観客が緊張感に耐えられるギリギリのラインを保っているかのように思えます。息つく暇もない波状攻撃から観ている側も逃げられず、場内が明るくなるまでドリンクに手をつけることすら忘れていました。
もしかしたら戦争映画にしては映像が美しすぎるということが欠点にもなるのかもしれません。顔が整いすぎ&綺麗すぎて鼻につくイケメンみたいな…(言ってるじぶんが混乱)。血がほとんど流れないことがその理由のひとつかもしれませんね。
顔といえば、これから観る人で外国人俳優の顔を覚えるのが苦手な方は、主要人物の顔をチェックしておいてもいいかもです。しっかりと情景を観ていれば理解できるレベルですが、戦争映画では珍しいちょっとした仕掛けがあり、顔で人物を判別できないとピースがうまくはまらないかも…?そもそもみんな軍服で区別しにくいですし、気にしなくても問題ない話なので別にいいんですけどね。
キャストもかっこよすぎます。顔ももちろんですが、その勇気が!ケネス・ブラナー演じる中佐は頼れる理想の上司!マーク・ライランス演じる民間船の船長は昔気質の良い親父!そしてトム・ハーディ!わー!これはもう観て!観てください!ホレる!ホレなおす!
「ダンケルク・スピリット」として語り継がれる、兵士を助けるため命がけで救助活動をした民間人たちの行動。軍人ですら尻尾を巻いて逃げ出したくなる戦場において、彼らが起こした勇気ある決断には涙なしではいられませんでした。
観終わった今、予告編では絶望的に感じた言葉の数々が、こんなにも心に深く刻まれるとは思いませんでしたよ。翻訳が微妙に異なりますが、これはプロモーションがうまいと思いました。さいきんは予告編で損をすることも多いのでナイスです。
以下でネタバレをしています。
ちょっとした仕掛けの件は、3つの時間軸が入り混じっているだけのことですが、その中心人物が民間船に救われるキリアン・マーフィでした。彼の顔を認識しておかないとなんでわざわざ時系列がごっちゃになってるのかわからないかも…。
劇中で昼夜が入れ替わることがありましたが、夜のシーンは主人公トミー(フィオン・ホワイトヘッド)が生き残るために逃げ惑うシークエンスでもあり、キリアンが民間船に救われる前の動向を知るエピソードでもありましたね。
民間船の父子の末っ子友人が勝手に船に乗り込んだときには嫌な予感がしましたが…やはり…。新聞に載るんだ!って息巻いていた彼のためにお兄さん青年が新聞社に掛け合ったシーンもまた泣けました。
青年(画像左)と言えば、キリアン・マーフィのせいで友人が重症になって、ついには死んでしまったにもかかわらず、キリアンに「あいつ大丈夫か?」って聞かれて「あぁ」って答えるところが…。それを見て親父も頷く。この家族は強い。
トム・ハーディが正統派なヒーローポジションを演じたのはいつ以来でしょうか?彼のドッグファイトのシーンはその映像美もあいまって鳥肌ものでしたね。水平線を垂直に映すシーンなんて、劇場ごと右に傾いたかのように感じて思わず体を押さえてしまいました。
最後の最後まで戦い続けたトムハ。戻らなければじぶんは安全に帰国できたはずなのに。車輪のシーンでは心の中で(出ろ!出ろ!)と応援してしまいました。その堂々たる退場もかっこよかったです。
トム・ハーディの相棒を演じたジャック・ロウデンもステキでしたね!撃墜されて水面に不時着後、民間船の親子に助けられたときに「afternoon.」とひと言!死にかけてたのにおしゃれ!ステキ!
予告編などで繰り返される「海で、空で、陸でも戦う。降伏はしない。生き抜け」という、どこに行っても逃げ場のないことを表しているかのような言葉が、実はこのダンケルクの歴史的事実を讃えた新聞記事の文章だったということにも震えましたね。
トリッキーな意欲作『メメント』、アメコミシリーズ『ダークナイト』、SF大作『インセプション』『インターステラー』など、金字塔を打ち建ててきたクリストファー・ノーランがまた新たなジャンルで歴史にその名を残しましたね。